応急危険度判定は各自の住宅被害の調査だけが目的ではなありません。

大震災が起こると応急危険度判定が行われ、被災したそれぞれの家に赤紙や黄色い紙を貼るということが行われます。
これは一般に応急危険度判定と呼ばれており、正式には「被災建築物応急危険度判定」と呼ばれるものです。
参考)全国被災建築物応急危険度判定協議会
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/oq/index.html
自治体もNHKをはじめとするマスコミも、防災の専門家と自称する人たちもきちんと応急危険度判定の仕組みを理解している人が少ないというのが現状です。
そもそも、応急危険度判定とは、ということについては上記のページをしっかり見ることで大丈夫なのですが、これは大部なので簡単にまとめてみます。
まず、最初に応急危険度判定とは?ですが、先のホームページからそのまま引用します。
○応急危険度判定とは
 応急危険度判定は、大地震により被災した建築物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止することを目的としています。
 その判定結果は、建築物の見やすい場所に表示され、居住者はもとより付近を通行する歩行者などに対してもその建築物の危険性について情報提供することとしています。
 また、これらの判定は建築の専門家が個々の建築物を直接見て回るため、被災建築物に対する不安を抱いている被災者の精神的安定にもつながるといわれています。
ということで、この文章を読むと、これまで応急機縁度判定について知っていたつもりの人も、?と思うのではないでしょうか?
 二次災害、通行する歩行者に対しても危険性を情報提供する?ということについて理解をしていた人は少ないのではないでしょうか。
 まず、二次災害とは大地震があった後に関連した災害を防ぐという意味です。この場合は1つは、地震により大きく被害を受けた住宅にそのまま居続けることで死の危険性があるような場合には家に戻らないように注意を呼びかけるということと、2つ目は建物の倒壊や屋根瓦の落下などで付近の歩行者に危険が及ぶことがないように注意を呼びかけるというものです。
このことについて、以下、少し丁寧に解説していきます。
まず、応急危険度判定というのは行政行為ということではなく、基本的にボランティアの世界です。
しかし判定を行うのは建築士であり、応急危険度判定士として各都道府県に登録された専門家が行うこととされています。
判定の統括を行うのは各自治体の災害対策本部であり、その呼びかけに答えた民間の建築士などのボランティアが大地震の直後に被害が酷く建物が倒壊して周囲に危険を及ぼす可能性の高い、比較的被害の大きなエリアを対象に短期間に、外観の調査のみで、その危険性をステッカーで表示していくというものです。
なお、調査の精度ですが通常1件10分程度で外観目視のみの判定ですので、人により、モノによってばらつきがあるのは当然です。
応急危険度判定というと大変な調査のように考える人もいるかもしれませんが、緊急的に大量の建物をチェックするという性格から専門家による達観的な判定をシステムにした程度のものということを覚えておいてもらえればと思います。
応急危険度判定ステッカー.jpg
このように、赤が危険、黄色が要注意、緑が調査済み(安全)ということでそれぞれの家にペタペタ張っていくものです。
そこに書かれている内容ですが、
応急危険度判定ステッカーの見方.jpg
先に述べたように、
1 建物そのものが継続使用しても命の危険はないか?<被害の程度を細かく調査するのが目的ではない>
2 建物が全壊することなどで周囲を通行する歩行者などが危険にさらされるか?
の2つの観点からチェックを行い、いずれかで危険と判断されると、赤=危険と判定されてステッカーが貼られるという仕組みになっています。
例えば、
1については、建物が全壊なら赤。
2については、建物が全壊していなくても瓦が落ちそうな状態でも赤。
となるのです。もちろん、建物が傾斜していて全壊、かつ、倒れてきそうであり瓦も落ちそうなら1&2で赤です。
このように、応急危険度判定の赤の意味は建物だけを見ているわけではないということなのです。
これを理解するには赤紙などの張られたステッカーに書かれている文言を見て判断するしかないのですが、現実問題としてこのあたりの理解が行き届いていない応急危険度判定士がいることも現実です。
ただの赤紙だと何を意味しているのか分からない・・・こういう課題があるのです。
一般の方からすれば、赤紙=危険を貼られたからといってすぐに全壊だと考えることは禁物で、何等か説明が書いてある場合はそれをしっかり読んで対処を考えることが重要です。
また、自治体、マスコミ、専門家の方々も本来の応急危険度判定の意味について、ことあるごとに知ってもらう努力が必用ですし、震災が発生した際には正確な情報を提供することが求められます。
なお、応急危険度判定はこの程度のものですので1か月も継続して行うものではありません。
地震から直後の1週間、長くても2週間程度で賞味期限が切れると考えるべきものなのです。
なお、被災した人にとって重要なのは「罹災証明」です。
「罹災証明」というのは市町村などの自治体が発行する者であり、この「罹災証明」により被災者支援策の対象になるか、また、給付金などがいくらになるかということが決まるのです。お金も絡むため、このための調査は市役所職員によって行われ、建物所有者立ち合いのもと、建物の内部なども見て1,2時間の時間をかけて調査をするものです。
応急危険度判定のように、ボランティアの建築士が10分で外観目視という程度の調査で判定をするというものとは全く異なりますし、建物所有者のためだけではなく、周囲の危険性も併せて判断するという、まさに、緊急時の被害を最小にするための取り組みなのです。

参考)応急危険度の目視の際に参考になります。
1 建物の危険について
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2 周辺の危険について
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