耐震診断の結果、アウトかセーフだけ、というのはもったいないのですが、分かりやすく解説するのは、なかなか難しいところです。
何しろ、耐震診断の結果は数字で表されるものだからです。
どうすれば、耐震診断結果の意味を多くの人に理解してもらえるのかは大きな課題です。
そうしたなかで、高知県の耐震診断結果の見かたの解説は参考になります。
高知県のページより、
耐震診断を実施した方へ 「耐震改修のすすめ」のパンフレット
←耐震診断報告書の解説 というものです。
http://www.pref.kochi.lg.jp/_files/00072717/H26.pdf
これを見れば大丈夫なのですが、少々難しすぎるかもしれません。
そこで、これを参考にして少し解説をしてみます。
耐震診断の考え方を知ってもらえればということに重点を置いてできるだけわかりやすく説明してみます。
まず、耐震診断の結果です。
耐震性の判定は、
・倒壊しない=大地震でも住むことも可能、
や、
・一応倒壊しない=標準=新耐震レベル、
などと表示されます。
以下の図に示したように、上部構造評点という数字によって、この判定が変わるというものです。
数字が大きい方がより安全です。
ここで注意をしてほしいのが、上部構造評点が1.0が標準=新耐震基準、つまり、今建てられている多くの木造住宅の標準的に求められる耐震性のレベルを満たしているのですが、「一応倒壊しない」という判定なのです。
ちょっとがっかりしてしまうかもしれませんが、1.5、つまり、標準レベルの5割増しでないと、「倒壊しない」という安全宣言らしき判定がでないのです。
これはそもそも建築基準法では震度6強から7といった大地震において倒壊はなんとか免れるが傾くなどのダメージを負ってもよいと標準レベルを定めているからです。
ですから1.0=新耐震基準なら、一応、安心というレベルです。
この上部構造評点。これは実際には建物のX方向、Y方向に分けてそれぞれ計算をしています。
そして、最も小さい数字を建物の判断のために使います。
X,Y方向は図で示すと、以下のようになります。
建物の周りに壁がぐるっと回っていると思ってください。
X方向、Y方向に沿ってそれぞれ壁があるとします。
それぞれの壁をX方向、Y方向に壁を押してみるということを想像してみてください。
その場合に丈夫な壁が沢山入っているとなかなか倒れないということで、この上部構造評点で評価をするということになっているのです。
X方向にある壁がX方向に壁を押される場合に抵抗をして倒れないように支えてくれます。
Y方向であれば、同様にY方向に押された場合に抵抗して倒れないように支えてくれます。
逆にX方向にある壁はY方向に押されても抵抗はしない、Y方向の壁だけが抵抗して支えると単純化して考えるのです。
これを簡略化して立体的に描くと以下のようになります。
単純化して、手前のところだけ壁が入っていて、他の3か所には壁はない場合を考えます。
上部構造評点の一番小さな数字で全体について評価をするので、この場合X方向の手前の領域ロは十分な壁があって、X方向の領域ロの上部構造評点は十分であっても、X方向の領域イや、Y方向の2か所の領域a.bについての上部構造評点は0となりますので、この建物は「倒壊する可能性が高い」となるのです。
解決策は領域ロ以外の3か所に壁を増設するということになります。
逆に領域イ、ロ、aに充分な壁があって上部構造評点が良くても、一か所だけ、領域bについての上部構造評点が低ければ、領域bはY方向に支える壁が足りないということなので、領域bの部分が弱いということなのです。解決策は、領域bの壁を増やすことです。
このように、耐震診断結果を図面と数字を見比べながら、しっかりみることで、このあたりが弱いなどということが分かるのです。
耐震診断結果の活用というのは、「一応倒壊しない」「倒壊する可能性が高い」といった判定だけではなく、その判定がどのようなことから判断されたのか、X,Yどの方向のどちら側の壁が足りないのか?ということまで、ぜひ、理解をしていただければ幸いです。
耐震診断は1階と2階でそれぞれ行います。
実際の判定結果では、この上部構造評点という数字は、木造住宅2階建ての場合は1階の数字が小さくなることがほとんどです。
つまり、通常は1階が危険なのです。
2階で寝るということのメリットは耐震診断の結果をよく見ることでも理解することができることでもあるのです。
※ 今回の解説は特に理解して欲しい部分をピックアップして、耐震診断をかなり簡略化をして説明をしています。
実際には、壁の種類による耐力の評価、壁の配置バランスによる低減、地盤が悪い場合の必要耐力の割り増し、積雪地帯の場合の考慮、劣化度による低減といったものが上部構造評点に反映されます。
詳しくは高知県のパンフレットご覧いただければ幸いです。
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