1月27日に公表された内閣府の「防災に関する世論調査」を読み解きます。
この調査は防災一般について問うた世論調査です。
実は、耐震の観点から見ると、突っ込みどころが満載で、前回は耐震診断の実施状況について触れましたが今回は耐震改修についてです。
前回はこの調査で耐震診断を実施していない人が51.5%という数字が概要版でも取り上げらえれ、マスコミにより、そのまま報道されていますが、実際は、一般に耐震診断が必要とされている旧耐震(調査では昭和55年以前の建築)の住宅については74.1%であり、これが本来の数字と言うべきものです。
耐震化率というのは新耐震の建物については政府は耐震性は不足していないとしているなかで、なぜ、内閣府が新耐震以降も耐震診断をしなければいけないのか政府の調査、そして結果の発表の仕方として疑問です。
さて、耐震改修について見てみます。
耐震診断の実施状況の更問として設定されており、
住宅の耐震改修の状況
問5で、「すでに耐震診断を実施しており、耐震性を有していた」、「耐震診断をしていないが、今後の実施予定はわからない」以外を答えた方(822 人)に)それでは、あなたのお住まいの「耐震改修」についてはどうでしょうか。この中からあてはまるものを1つだけお答えください。
平成 29 年 11 月
・すでに耐震改修を実施した 3.5%
・今後、耐震改修または建替えをする予定がある 3.3%
・耐震改修または建替えの予定はないが、今後、実施する必要があると考えている
10.6%
・耐震改修または建替えをするつもりはない 37.7%
・わからない 44.%
というもの。
整理すると、822人とは、先の質問の以下の人たちです。
耐震診断を実施している人のなかで、
・すでに耐震診断を実施しており、耐震性が不足していた 2.0%
・すでに耐震診断を実施したが、結果についてはわからない 1.4%
耐震診断を実施していない人のなかで、
・耐震診断をしていないが、今後、実施する予定がある 3.5%
・耐震診断をしていないが、今後、実施する予定はない 17.7%
・わからない 20.2%
これらの人を対象に更問いしたというものです。多数を占めるのは耐震診断を実施していない、かつ、分からない、耐震診断をする予定が無い人。
しかし、問題は、その対象者の住宅が旧耐震か新耐震以降なのかということです。
この調査対象を確認してみます。
そのためには、ホームページにある、調査票をみる必要があります。
防災に関する世論調査 平成29年11月(N=1,839)
4 集計表から分かります。
https://survey.gov-online.go.jp/h29/h29-bousai/4.html
具体的には、以下。
・集計表7(Q5SQ)住宅の耐震改修の状況(CSV形式:9KB)
https://survey.gov-online.go.jp/h29/h29-bousai/table/PH2908007.csv
これから、PDFの概要の7ページを書き換えてみます。
平成 29 年 11 月 公表の数字 → 旧耐震のみの数字
・すでに耐震改修を実施した 3.5% → 5.4%
・今後、耐震改修または建替えをする予定がある 3.3% → 6.1%
・耐震改修または建替えの予定はないが、今後、実施する必要があると考えている
10.6% → 14.1%
・耐震改修または建替えをするつもりはない 37.7% → 48.7%
・わからない 44.% → 25.6%
となります。
「わからない」とする人の数が減り、既に耐震改修をした、する、何らかの対策が必要と考える人が増えるとともに、耐震改修又は建て替えをするつもりはないは半数近い48.7%という高い数字となっています。
やはり、この数字の方が現実をよく表しています。
その理由については、この調査では問うていないのですが、やはり、「お金がない」といことでしょう。
お金がなければどうしようもないということです。
また、結果をみると、
(イ) 1981(昭和56)年から1999年(平成11年)以前/(築36年~築18年)
(ウ) 2000(平成12)年以降/(築17年以内)
といったいわゆる新耐震以降の住宅についても耐震改修がなされていることが明らかになっています。
さらに、何と2000年以降の新耐震の住宅について、総数193棟×6.3%=12棟も耐震改修が実施されているのです!!
果たしてこれは本当に必要な「耐震改修」だったのか?
それとも建築確認を取ったにも関わらず欠陥住宅だったのか?
違法な改修をしたのか?
ユーザーの自発的な意思で更に耐震性を上げたいというニーズがあったのか?
これが気になるところです。
この調査からだけでは分かりませんが、基本的には新耐震施行以降の2000年以降に建築された住宅で耐震改修をするということは通常は必用のないものです。
何が行われているのか心配になる調査結果なのです。
まだまだありますが、このように、じっくり見てみると、この内閣府の世論調査から様々な問題が浮かび上がってくる調査なのです。
(神戸市提供)
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