「無料耐震診断」は市町村が実施しているもの以外を受ける必要はありません。

内閣府の「防災に関する世論調査」については旧耐震よりも新耐震の住宅の方が数多くの耐震診断をしていることに驚かされました。
耐震診断というのは基本的に旧耐震の住宅について診断を行うために開発した方法であり、新耐震以降の住宅を対象に考えられたものではないのです。もちろん、新耐震以降の住宅についても使えますが、それに最適化されたものでもなく、どちらかと言えば厳しめの基準なので新耐震以降の住宅でも耐震性が不足しているという結果になるという性格のものだからです。
実際に、国や都道府県、市町村が耐震診断の費用を補助している建物の対象はほぼ100%旧耐震、つまり、昭和56年6月より前に確認申請をして着工した木造住宅等が対象です。

にも拘らず、内閣府の調査においては、新耐震以降の住宅についても数多くの方が耐震診断(中には耐震改修の実施の例も)を受けているということが分かりました。
これだけ新耐震の耐震診断を受けたという結果となったのは、民間による無料耐震診断が原因ではないかと考えられます。
実際、みなさんの中には、無料耐震診断はいかがですか?という民間業者の営業を受けたことがあるかもしれません。
何事もそうですが、役所以外の人間が無料で何かをしてくれることはありません。
よくあるのは相談は無料、実際の業務になれば有料というものです。
このビジネスモデルはまず無料といって客を捕まえておいて、実際の業務の段階でその分の費用を業務の料金に紛れ込ませるということです。最初の無料の部分は仕事を請け負うためのいわば広告宣伝費という訳です。
これは民間企業では当然のことです。
民間企業が自ら無料でサービスを提供することに対するお金を支払ってくれるお人よしは誰もいないのです。
もし、民間が無料耐震診断のサービスを提供することができるとすれば、具体的に国や都道府県、市町村が補助金を出して、その費用を負担している場合のみです。
民間が独自に行っている無料耐震診断は必ず民間企業が工事費などで後から民間が儲かる仕組みになっているのです。

従って、耐震診断をした以上は、耐震性が不足していると恐怖心をあおって、新耐震以降の住宅についても耐震改修をすすめるという悪質な業者も実際にいるのではないか?という危惧があるのです。

世の中、タダより高いものはない、と言うではないですか。
無料耐震診断をしませんか?といった民間業者の誘いはきっぱり断り、無視するのが正しい判断なのです。

耐震診断を受けるのであれば、市役所など役所の窓口にまず相談してみることを強くお勧めします。
新耐震の方は住宅のメンテナンスの調査はしたほうがいいかもしれませんが、敢えて「耐震診断」をする必要はありません。平成30年からの宅建業法においても建築基準法に則った新耐震以降の建物は耐震性を有していると耐震診断をすることなく、新耐震基準に定める耐震性があるものと扱われます。

問題があるとすれば、旧耐震でも、木造アパートやマンションなどについては旧耐震であっても、市町村などが耐震診断の補助金の対象にしていないところもあります。
そうした場合は、耐震診断だけを依頼するのではなく、いきなり耐震改修工事をするということで相談することをおすすめします。この予算の範囲内で耐震改修工事をしたいという相談をするのです。耐震改修は予算なりの対応もできますので、その方が診断のみよりも民間業者はまじめに取り組みます。わざわざ高いお金を払って耐震改修費用がいくらになるか分からないような耐震診断だけをすることに意味はないのです。
もちろん、耐震診断の仕組みややり方が分かるような方であれば、無料耐震診断を冷やかしで受けてみるのもいいでしょうし、有償で建築士に耐震診断のみを依頼することを否定するわけではありません。よく分からない人が「無料」という言葉につられて、不必要な耐震改修、無用な不安を感じることになることが問題なのです。

無料耐震診断に耳を貸す前に、まずは二階に寝ることからスタートしてみていただければ幸いです。
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